長野県情報教育研究
コンピュータ活用事例集 Vol.6
インターネットの学校教育への活用の試み
インターネットを学校教育に活用する研究会発足について
上田市 塩尻小学校
稲垣 敦史
地域学校共同利用データベースデモ
http://dbkun.ucv.co.jp:8080/
1 はじめに
「インターネット」という言葉を聞くようになってからだいぶ長い時間が過ぎた。当初、インターンネットはごく限られた技術エリートたちだけの特殊な世界として話されていたように思う。その後、多少なりとも広がりを持つようになるにつれて、「怪しい・いかがわしい」ものとしてのイメージができてきたのが第2期であろう。どうもどのような技術もそういう時期を通り抜けるものらしい。コンピュータそのものも「アヤシイ機械」と見られていた時期もあったように思うし、また、CD−ROMなどというものはその典型だろう。今でこそコンピュータ用のメディアとして定着し、欠くことのできないCD−ROM売場も、一時は見に行くだけでも恥ずかしいような時があったことはご承知のとおりである。インターネットもその時期を過ぎて、ようやく実用の段階に入って来つつあるように思う。また、低迷ではあっても一般のユーザーに手が届く範囲の費用と技術とで繋ぐことができるようになったのが大きなことだろう。それに伴って学術関係や企業で蓄積してきたノウハウの一部が一般にも公開されるようになって、インターネットは一層活用しやすい方向に向かっている。これからも今まで以上に活用をされるようになっていくことだろう。義務教育の現場でもようやく、インターネットに関心が向いてきており、「新しい道具」として認識されつつあるこの頃である。
インターネットそのものはいろいろな説明がなされているが、基本的には世界的な広がりを持つ巨大データベースと考えてよい。巨大であるが故に無限の活用方法が考えられる。一方、巨大であることの弱点も存在する。ここでは、インターネットの特性を利用すると同時に、その機能をやや制限的に活用することでの利用研究を試みている。
2 義務教育におけるインターネット利用と問題点
義務教育関係の各学校でも100校プロジェクトなど、ごく限られた範囲での活用実験の段階から、ようやく一般化に向けての動きが始まりつつある。これらの先進的な研究がおおいに成果を上げてきたこともあって、現段階でコンピュータやそのネットワークを本当にコミュニケーションの道具として活用し、自分たちの学習や日常生活に生かしていっている子どもたちもいる。けれども、それはごく少数であり、一般的にいえば何とかキーボードを拾えるぐらいのことができればいい方というのが実状だろう。実際、私の勤務している学校にはまだコンピュータネットワークが導入されておらず(96年度末までには整備の予定)教室の机の上においてあるコンピュータ(DOSベースの)で子どもたちが「伝言板遊び」をしているのがせいぜいのところである。(これはこれでなかなかおもしろいのだが)。そのような現状やレディネスをふまえて考えると、子どもたちがオンラインでコンピュータを使って情報をやりとりするということはかなり困難であろう。実際の問題として、外と繋げるという環境整備も遅れている。また、仮にやってみたところで、特にインターネットの場合には難しいだろう。確かに,世界的な広がりを持つインターネットは巨大なデータベースとして無限の可能性を持つ一方で、必要な情報に行き当たることができるかどうかは運次第のようなところがある。サーチエンジンの充実などでヒット率はかなり上がっているとはいっても巨大すぎてしまう故の困難があり、ともすると「情報の海に溺れてしまう」ようなことが起こるのも事実である。
情報活用能力の中で「情報発信」は最も重要なことの一つであり、インターネット上にホームページを公開することは大きな可能性を持つものであると思う。子どもたちがまず、発信できるだけの中身を持ち、自分たちの力で何とか発信していこうとすることは、新しい学力観やこれからの時代を考えていく上からも有意義なことが多いだろう。また、HTMLはホームページ記述のみの言語(「言語」といえるのかどうかよく分からないが)のようにとらえられているところもあるようだが、実際に使ってみるとなかなか簡単で便利なものであるけれど、本稿ではそれに深入りしていくことは避けたい。しかし、一方ではメンテナンスがたいへんだったり、苦労して公開してもそれほど多くの反応がえられなくてがっかりしてしまうようなこともあるだろう。また、そのような活動が個人の教員のボランティア的な行動または趣味的な活動に負うところが大きいことも多い。それゆえ以前からよく、コンピュータの活用については「好きな先生がいる時は活用できるがその人が転勤してしまったらおしまい」というような問題点も指摘されてきている。Windows95が動くようになってからは多少なりとも改善されてきているとはいうものの、やはりそういう傾向は現在でも強い。インターネットについてもまた同様ではないだろうか。複雑なシステムになればなるほどそういう傾向が強くなってしまう。このあたりの問題点を本当に解決していかないと、便利に使えることは分かってはいても、「誰でも気楽にインターネット」などというのは単なるテレビコマーシャルのキャッチコピーくらいになってしまいそうである。
3 私たちの研究の方向
本研究は基本的には三つの点からなっている。「インターネット上にオンラインのデータベースを作ること」、「閲覧検索も登録もブラウザ上からできるようなシステムにしていくこと」、「義務教育側と長野高専との共同研究であること」の三点である。
私たちが日常的に必要としている情報は以外に狭い範囲の限定された内容が多いのではないだろうか。すぐにでも役に立つ情報としての「音楽会のプログラムや楽譜のあり場所」「運動会の種目についての情報交換」「地域の産業について学習するのだが適切な見学場所はないだろうか」「地域探訪や遠足に適した場所はないか」等々のデータを学校間で自分たちに必要なデータベースとして共有するようなことは、日常的な教育活動の上では大変有効に作用するものであろう。一方で、「日本各地のくらし」というようなテーマでは広域的な情報の交換がより有効であり、そういう面から考えると、広域的な広がりをもっていくことについては望ましいことである。ただ、「ワールドワイド」な広がりと異なるのは、ある程度限定されたテーマであり、必要に基づく情報の集まりであるという点である。それ故、誰にでもおもしろく見ることができるということとはちがうが、目的がはっきりしているところではかなり有効に使える可能性があるものと考えている。安定した運用ができる見通しさえつけば、当然、広い範囲からの登録や検索は歓迎したい。その一方で、ローカルなもの(遠足情報など)はやはり地域限定版的な傾向が強くなっていってしまうことは避けられないだろう。
インターネットを利用する場合、ブラウザは一番入り口にある道具であり、使い方もごく簡単であると言って良いだろう。「ブラウザ上でマウスだけでデータベースの(ANDやORなどの条件式を使う検索も含めて)検索閲覧ができる」「ワープロで文書を書ければこれもブラウザ上からのデータの登録ができる、デジタルカメラやイメージスキャナからの画像を登録できる」ということは今回の研究の中で最も重要なことの一つであると考えている。どうしても「コンピュータ活用」「インターネット」という言葉そのもののあたりで「難しい」「めんどう」というイメージが出てきてしまいがちなものである。そこで、利用者の技術的な垣根をできる限り低くして、たとえば銀行のATMのような、真にだれにでも使えるものをめざしていく。これによって、「担当者が代わったら動かなくなってしまうシステム」や「係の先生でないと動かせないシステム」からの脱却をはかりたい。また、簡単に動かせるので多く利用活用され、新しいデータが登録されていくということで、多くの先生方からの意見を聞くことができ、よりアクティブなデータベースになっていくことが期待できるだろう。
どちらかというと、今までは(私を含めて)趣味的にコンピュータを活用してきている教員はプログラムの問題やその他技術的な問題を解決することが中心的な活動になってきたという傾向が強かったように思う。けれど、ここでは長野高専との間で仕事を分担してしまうことを考えている。義務教育側では有効な利用方法や、より使いやすい設定などについての研究を行い、高専側でそれに対応する技術的な対処をするというかたちを取っていきたい。もちろん、技術的な問題について知りたい場合には高専側でも十分に対応してくれることを約束してくれているが、そんなことは必要がなくて便利に使えればいいという先生方を中心的な利用者と考えて作っていきたいということがこの研究テーマのひとつの柱である。そのようにすることで「誰でも使える」「死蔵しない」システムをめざしている。長野高専側でも電子情報工学科の中澤達夫助教授を中心に、これまでには例の少ない「義務教育の現場との連携による研究」として全学体制の中に位置づいている。
4 計画の実際
(以下は長野高専電子情報工学科中澤達夫助教授からよせられたもので、前の部分との重複もあります)
このデータベースは、まだ、概要を紹介するための簡単なプロトタイプを作成しただけの段階であり、詳細な仕様はいろいろな意見を取り入れながら固めていく予定である。ここでは、構想の概略について説明する。
このシステムのハードウェアは、サーバという高性能コンピュータ(といっても、CPUに最近のPentium200MHzを搭載し、UNIXをOSとするPC)と、利用者各自のコンピュータ(インターネットに接続できるもの)から構成され、これらがインターネットで相互に接続されたものである。また、ソフトウェアは、UNIX上で稼働する市販のデータベースエンジン(Empress)を中心とし、このデータベースにインターネット経由でブラウザからアクセスするための一連のプログラム(一種のCGIスクリプト群)で構成されている。最近Windows上で稼働するデータベース等も市販されているようであるが、ネットワーク上で安定且つ高速に動作し、大容量のデータを取り扱えるシステムとして、あえてUNIX上のものを選んだ。もちろん、UNIXを必要とするのはサーバとなるコンピュータだけであり、システムを利用するときには、適当なブラウザがインストールされていてインターネットに接続が可能なコンピュータであれば、どんなOSのどのメーカのものからでも、同じように操作できることが特徴である。
データベースの構築および維持管理は、メンバーを募ってボランティアによる運営を予定している。ここでメンバーとしては、データベースの内容を検討したりデータの登録などを行いながら、このデータベースを教育に活用する方法を探っていく「一般メンバー」と、ある程度以上のコンピュータに関する知識を持った「技術サポートメンバー」(現在は長野高専のグループが対応しており、今後、信州大学や長野県短期大学の援助も得られる見通しである)との2種類を考えているが、両者の区別は必ずしもはっきりさせる必要はない。また、メンバー全体の同意が得られればこのデータベースをインターネットに公開することも可能であるので、上記のメンバー以外でも、少なくとも情報の検索を利用することはできる。
データベースとは、さまざまな情報を一定の規則に従って「再利用可能な形で」記録したものをいう。ここで提案しているデータベースシステムでは、多くのテーマ、例えば「音楽会の演奏曲目」、「遠足の目的地」、「郷土の身近な史跡」などについて、それぞれ、いろいろな学校などで集めた情報をまとめたデータベースを個々に作成し、その全体をまとめて「地域学校共同利用データベース」として運用する。このとき、システムの枠組みを実際にコンピュータ上に作成する作業についてはある程度の技術的知識を必要とするため、メンバーが担当する。データそのものの収集は各学校現場の教員および児童生徒が担当し、そのデータの登録についても、できるだけメンバー全員が自分で操作できるように、システムの操作性を工夫する。
このシステムは、利用者側から見るとインターネットのホームページの一つと考えることができる。システムの基本的な利用法は、まず、全体のトップページ(ホームページ)から、利用しようとするデータベースの名前を選択し、続いて、「データの検索」か「データの登録」かを選んで目的のページにジャンプし、作業を行う、という手順になる。このとき、殆どの操作が「マウス」だけを使ってできるように工夫する予定である。このことで、コンピュータにあまりなれていない教員や児童生徒でも、内容に興味を持てば、あまり抵抗なく使える環境を作ることを目指している。具体的には、検索の場合のキーワードや、登録の場合に予想される言葉を予め設定しておいて「プルダウンメニュー」の形で示すことで、マウスによる操作を実現する。もちろん、登録の場合には、キーボードから入力する必要のある情報があり、完全にマウスのみの環境を作ることは不可能といえる。しかし、この場合には、たとえばファックスで技術サポートメンバー宛に情報を送れば登録を代行するなどのサービスをすれば、広く情報を集めることができるであろう。このデータベースでは、音声や画像等も利用できる。
5 おわりに
1996年12月に長野高専の中澤先生と上田市内の教員12名で研究会を発足させたところで、これから具体的な設計や活用についての研究を進めていくことになっている。また、現在、仮に「音楽会プログラムデータベース」を作って試験運用中であるので、ご意見を聞かせていただけるとありがたい。12月現在のURLは以下の通り。
http://irp.nagano-nct.ac.jp/demo.html
(現段階では言語をEUCにしないと文字化けが出てしまうが、運用段階では改善される予定)